第13回日本選手権 平成8年3月16日から24日、千葉県野田市関宿滑空場にて、第13回日本選 手権が開催されました。今回この日本選手権に初参加しましたので、この場を借 りて簡単にレポートさせていただきたいと思います。妻沼では毎年学連主催で学 生日本選手権が行われていますが、こちらの日本選手権は(社)日本滑空協会が 主催する大会で、この大会の成績をもとにして世界選手権への日本代表権者が決 定されるというものです。日本選手権には「スタンダードクラス」と「15mク ラス」の2つのクラスがあり、今回は、スタンダードクラスへ9機、また15m クラスには5機が出場しています。私はスタンダードクラスに参加しました。機 体はポーランドの生み出した名機、最良滑空比43のSZD-55。装備も抜群で、ケン ブリッジのS-NAV+GPS-NAVの最強の組み合わせで、怖いものなしと言った感じで す。え?腕がなければ装備が良くてもだめだって?そりゃそうなんですが……。 ○DAY1:3月16日 西からはシーラスが覆ってきています。エマグラムと予想最高気温から予想され るサーマルトップは1000m前後。今年の主催者は比較的短めのタスクをセットす ると聞いていたので、この天気ではタスクが100kmを越えることはないだろうと 思っていましたが、ブリーフィングで手渡されたタスクシートには、下総利根大 橋→野田橋→東北道の利根川の橋→芽吹大橋→三国橋→関宿という140kmのタス クが書いてあります。うーむ。曳航直前もあまり芳しくなかったのですが、スニ ッファーで飛んでいたモーターグライダーから「2〜3m/sで上昇中」という無線 が入ると競技実行となりました。はじめのうち関宿付近では1300m位まで上がり 野田橋はクリアーしたのですが、その後境に近づくにつれ条件が悪くなり、結局 私は森中さんと一緒に栗橋にO/Lしてしましました。何人かの人は若干北を迂回 して東北道の利根川の橋をクリアーし、私と同じクラブのアクシオンの岩崎さん は芽吹大橋までたどり着き今日のディリーとなりました。私は4位。 ○DAY2:3月19日 予想されたサーマルトップは1600〜1800m。タスクは、下総利根大橋→野田橋→ 芽吹大橋→複猿橋→関宿関門→複猿橋→関宿滑空場の184km。離脱して最初のサ ーマルで、平均2.5m/sで1500mまで上昇。この時点では関宿付近では4/8程度のCu コンディション。スタートゲートオープン後、ワングライドで野田橋、芽吹橋を クリヤー、境の南5km位のところまで来ます。ここで600mから1600m(雲底)まで 再上昇。関宿近辺は積雲があったのに、境から北はブルーがしばらく続いていま す。遊水池の西側を通ってそのまま福猿橋へと向かえば良かったのですが、何を 思ったか私は少し北の山部の積雲の誘惑に負けて進路を北に振ってしまいまし た。しかしこれが失敗。結局、遠回りにはなるわ、後から来た岩崎さんに追い越 されるわで最悪。その後も一度栗橋で300mを切ったり、板倉でみかも山に張り付 いてみたりと苦戦の末何とかフィニッシュ。トータル4時間もかかってしまい、 これは今日はビリだろうななんて思っていたら意外に4位。しかも5位以下の人 たちはみんなO/L。粘ってがんばって良かった。私の総合順位は変わらず4位。 ディリーは今日も岩崎さんでした。 ○DAY3:3月20日 タスクは下総利根大橋→芽吹大橋→埼玉大橋→佐野サービスエリア→渡良瀬川大 橋→東北道と利根川の橋→藤岡鉄橋→渡良瀬川大橋→関宿滑空場の135km。旋回 点がたくさんあって迷ってしまいそうです。今日は同じクラブ(アクシオン)の 岩崎さんとチームフライトで飛びました。一日目、二日目は岩崎さんと別々に飛 んでいたのですが、二人で飛んでいた方がサーマルを発見しやすいのです。岩崎 さんは1位をキープしたいし、私ももっと順位を上げたいというところで一致団 結です。境から北のエリアは高層に薄雲がかかっていて、なんとなく条件が悪そ うだったのですが、行ってみるとそこそこで、チームフライトをしていたことも あり難なく(ホントは板倉で一度低くなったけど)コンプリート出来ました。結 果は私と岩崎さんと同率1位でした。私は総合3位に浮上しチームフライト大正 解でした。 ○DAY4:3月24日 今日が最終日です。トップは1500m位の予想。タスクは下総利根大橋→芽吹大橋 →福猿橋→関宿滑空場の103.6km。短めなのは最終日だからでしょう。福猿橋も だいぶ行き慣れました。昨日うまくいったのをいいことに今日も岩崎さんとチー ムフライトです。予想のトップに反して実際は1200m位でした。境あたりまでは 積雲の下をクルーズしていきます。境から北西はブルーでした。慎重に進みます が、遊水池の北西側で大々的に野焼きをやっていてその中を進んでいきます。福 猿橋をクリアーしたのち振り返ると板倉の北側でものえらい勢いで煙が上がって いる野焼きがありました。もうこれしかないと一目散につっこんでいきます。バ リオはプラス一杯で張り付き、アベレージャーが7m/sを示し、高度計は狂ったよ うにぐるぐると回っていきます。もうこんなのはじめてといった感じで、2分弱 で600m〜1300mまで上りつめ後は楽勝でファイナルグライド。これで今日も岩崎 さんと私で同率1位。しかも私は総合2位に浮上。スタンダードクラスはアクシ オンでワンツーとなりました。 ○チームフライト なんだそれならはじめからチームフライトをしていればよかったじゃんという訳 なんですが、チームフライトはそんなに簡単に出来るものではありません。岩崎 さんと私は一緒に飛んだのがほとんど初めてだったので、実は最初の二日間はお 互い様子見でした。それでも後半二日間でチームフライトが出来たのは、それま でのアクシオンでの実践的トレーニングの成果と言えるでしょう。 ○GPS 今回の日本選手権では前回と同様、ケンブリッジ社のGPS-NAVフライトレコーダ ーを使ってスコアリングを行っていました。GPS-NAVはこれまでの世界選手権で もスコアリングに使われていて、今やグライダー界の標準となっています。単に スコアリングのために記録を取るのであれば、電源をつないで機内に放り込んで おくだけという手軽さで、写真判定とは比較にならないほどの正確さでスコアリ ングが出来ます。それにディスプレーをつなげれば最強のナビゲーション装置に もなり、これなら地図も不要?というくらいです。 ○というわけで はじめて参加した日本選手権でしたが、運も良かったのでしょう、2位という好 成績をおさめることが出来ましたので、自分としても結果は上々と感じておりま す。