続)トビウオの滑空 OB会長 東 昭 トビウオやトビイカがすばらしい滑空飛行を行うこと良く知られている.私も 小さい頃から、トビウオの滑空を見ている。子供の頃は左程不思議に思わなかった のあるが、航空力学を,専門とするようになってから、何故トビウオは水平滑空を するのてあろうかと疑問に思うようになった。 航空力学では、「滑空機は、最大揚抗比で滑空する時、最大滑空比が得られる」と 教わったり、また教えてきた。では何故トビウオは水平滑空をするのであろうか。 シイラ等に迫われての必死の逃走に、比重が1/820も小さい中に飛出したから には、なるぺく遠くへ飛ぽうとするは当然ではないか.何故飛ぴ出す時の速度で 与えられ運動エネルギを、高度の位置エネルギに変えてから、速度一定の定常滑 空に入らないのだろうか。 上述の定常滑空に対して、若し高度を獲得することなく、水平飛行を続けると、 当然抗力に対して速度を失っていく非定常滑空となる。そして,最後は失速運度 になって落下する。では(a)定常滑空と(b)非定常滑空とで、どちらのほうが飛 距離が伸びるかを簡単に解折してみた。その結果、次のことが判った。トビウ オ程度の滑空機では、(a)、(b)何れも滑空距離に差がなかったのでる。しか し滑空機の持つエネルギ高度Hが大きいか、面荷荷重w/sが小さい時、即ちパラ メタρgH/(W/S)が大きい時、(a)の方が(b)より大きい値となる。つ まり高性能滑空機でも、高度が高ければ定常滑空が良いのであって、教わったとおり 飛べば良い。簡単な計算では心配なので、そこで用いた仮定のいくつかを外し て、変分問題 として数値計算も行ってみた。結果はやはりほぼ同しであった.ただ面白かった のは、(b)の非定常滑空では、最後の失速に近付いた所で、上げ舵をとって 最大揚力係数を保持して、ジャンプ飛行をすると、そうしない時より若干飛行 距離が伸びることが判ったことである。 以上は、地面に近付いたときに揚抗比が増大するとい う“地面幼果”を考えない場合の結果である。そこで地面幼果を入れた数値計算 を行ってみた。そこで判ったことは、次の通り: (i)トビウオ程度の,翼面荷重と 高度の滑空機では、出来るだけ水面に近い非定常滑空が飛距離が伸びる。 (ii)高性能滑空機も、高度が低くなったら、そして若し地面幼果か使える 状況なら、高度を下げて加速し、なるべく低高度で非定常滑空をした方が距離が 伸びる。 (iii)最後のジャンプ飛行は、地面効果が利用出来る時は不要である。 実際のトビウオは、一般に確かに低高度ではあるが、必ずしも水面すれすれの飛 行ではない.理由はいろいろあろう。追って来るシイラの動きを良く見る必要 がある。水上に飛出して襲う魚もいるので、時に空中で旋回もする。降下して水面 に近付いてからでも、いったん尾びれの下葉だけを水中につけて煽り、再び空中 に飛出すこともある。 鳥人問コンテストというお遊びがある。琵琶湖面より高さ10mの台上から飛出 して飛距離を競うものであるが,最近は多くの機体が、先ず降下して湖面すれすれ に高度を下げ、その後高度一定の非定常滑空を行っている。3年前に滑空距離が 250mを越えた。大したものである。