トビウオの滑空 -翼友12号 OB会会長 東 昭 トビウオの滑空性能をしらべるために、ツクシトビウオと (ホン)トビウオとの2種の魚、各数匹を入手し、形態を しらべてみた。今までに判った諸元を表1と図1(略)に 示す。以下にトビウオを滑空機とみなした場合の性能につ いての感想を述べてみよう。 全体の印象は、バランスのとれた良い形態であるなとい うこと。翼幅はほぼ同じ大きさの鳥に比べて、やや小さめ である。翼面積も質量に比べて小さめで、翼面荷重は約100N/m^2 と鳥よりは大きめ、したがって滑空速度は速い。これは、 シイラ等の敵から逃げるために、せめて空中では彼らより 速くないといけない。因みに、離水は体の大部分を空中に 突出し、尾鰭の下葉のみを水に入れたままでそれを烈しく 煽って初速をつけ、空中に飛び出し、その後いっぱいに広 げた胸鰭と腹鰭で滑空をする。主翼(胸鰭)のアスペクト 比は約5で、これは羽ばたき飛行をする鳥の仲間と同じく らいで、滑空する鳥の仲間よりは小さい。そこで滑空性能 は、揚抗比が約15かあるいはそれより少し上くらいにな ろうか。その時の速度は約15m/s。 今一番判らぬことは、重心が余りにも後方にあること。 アスペクト比の大きい主翼のみで飛べば良いのに、この 重心位置だとアスペクト比の小さい尾翼も相当揚力を 負担していて、揚抗比の最大値が損をすることになる。 どうしてか。 ○表1 トビウオの諸元 +--------------------------+--------------+--------------+ | |ツクシトビウオ|(ホン)トビウオ| +--------------------------+--------------+--------------+ |全長 [cm]| 32.0| 32.8| |主翼(胸鰭)翼幅 [cm]| 33.9| 38.3| |主翼(胸鰭)面積 [cm^2]| 219.7| 262.4| |主翼アスペクト比 | 5.23| 5.59| |水平尾翼(腹鰭)翼幅 [cm]| 14.3| 16.6| |水平尾翼(腹鰭)面積[cm^2]| 57.1| 73.6| |水平尾翼アスペクト比 | 3.58| 3.74| |質量 [kg]| 0.226| 0.243| |翼面荷重 [N/m^2]| 100.9| 90.8| |尾翼容積 水平尾翼 | 0.146| 0.217| | 垂直尾翼 | 0.182| 0.141| +--------------------------+--------------+--------------+