可変斜め翼グライダー 翼友12号 部長 佐藤淳造 グライダーは上昇気流中でソアリングをするには、滑空速度が遅いほど正確 に小さな円をえがけるし、バンクも小さくてすむので有利となる。しかし、この 為に設計速度を小さく作った機体は、三角周回のような速度競技や距離飛行には 不利なことは良く知られている。このために水バラストを用意して、熱上昇流の強い 間は翼面荷重(機体重量/主翼面積)の値を大きくして高速滑空にそなえ、万一上昇 気流が弱まって不時着のおそれがでてくると、水を拾てて身軽になり、弱い上昇 気流でなんとか高度を保ちながら飛ぽうという機体がいくつかる。 このように滑空性能とソアリング性能といった相反する要求を見合せて、両方をほ どほどに満足するような機体の形状を見い出すことは、なかなか困難なものだ。 新い機体を航空部で入手する場合にも、初等練習用か上級競技用かに応じて翼面 荷重の異なる機体を選んできた。 同じような事が飛行機でもよく生ずる。離着陸 は飛行速度が遅いほど楽だが、巡抗は速いほど良い。この両方満足させるため に、今ではフラップ等によって機体の形状自体を可変にして凌いでいる。飛行機 がさらに速くなって超音速で飛ぶことになると、主翼に後退角を与えるほうが有利に なるが、これは離着陸の低速飛行には非常に不利である。このために可変後退翼機 というのが作られている。これは飛行中に左右翼の後退角を対称に変られるように したものであるが、米国のR.T.jonesという人が考えた非対称な面白い 可変翼機がある。こは後退翼でなくても前進翼も高速飛行に対する空気力的な 能力は同じなのを利用して、主翼自体は左右つな がった一体のものであるが、胴体から突き出た軸のまわりに主嚢を回転させてゆ くと、左が後退すれば右は同じ角度だけ前進するのでこのような斜め翼で高速飛 行をしようというものである。無論、離着陸などの低速飛行のときは、左右翼を 胴体に直角にして対称な状態で利用するわけだ。実際にAD‐1という試験機が NASAで作られテストされている。 この機体の原理を調べるために、実験室で模型をつくったりして色々と試してみ ると必らずしも超音連でなくとも、この斜め可変襲機は有効なようである。翼を 斜めにしてしまうと機体の正面投影面横がその分だけ減少する。この為に抵抗が 滅少して高速飛行に有利になる。しかも、翼に楊力を発生させるのに有効な流遠 の成分は、翼の1/4弦長線などに直角な成分であるから、斜め翼にすると機速が同 じなら直角成分が滅っただけ揚力が減少してしまう。これを補うには速度をあげ ればよい。このように斜め翼の状態では、より高速側に揚抗比最大の点がうつ り、高速飛行に有利となる。このように考えるとグライダーの上昇と高速滑空の 兼ね合いを斜め可変翼で解決する可能性が考えられる。グライダーはたいした速 度では飛ばないし軽いから、主翼と胴体間のピボット構造もあまり重くはならず に作れようし、人力で翼を動かすようにしても多分充分にこなせるであろう。離 着陸や上昇中はZを直角に横に拡げ、クロス・カントリーに入ると斜め翼として 突っ込んでいく。ほんとうにうまく行くかどうか、誰かもっと研究してみません か。