From: t60211@mech.t.u-tokyo.ac.jp (Shin`ichi Honda) Date: Mon, 2 Sep 96 18:40:35 JST Subject: 合宿報告(長文) `96年度8月期活動報告 東京大学航空部主将 本田真一 夏合宿1 7月27日ー8月2日 一年生を向かえた春からはや三カ月。すでに合宿も2つこなし、脱落者なし(!)で 夏を向かえることとなりました。しかも、新たに二人の新入部員を加え一年生は全部で 七人と、なんと上級生全員よりも多くなってしまいましたY(^^)Y さて、今年の夏は合宿を2つ計画。その一つ目は妻沼にて学習院との合同合宿で 行ないました。互いに部員の人数が少なく、また、R/Wの希望が重なったため、 昨年の主将同士で合同としたようです。 どちらかがキャンセルして、単独の合宿としてもよかったのですが、これから先も 部員の急激な増加は望めそうもないことを見据え、試験的なことをやってみるいい機会 と考え、実現させてみました。さてさて、どうなったことやら。 先に大まかな結果だけ言ってしまうと、主幹校が東大であるにも関わらず前半は 東大生の人数が少なく、学習院側に少なからず負担を強いる結果となり、また ウインチのトラブルに端を発し、いつもと勝手の違う状況に振り回される結果となり 悪戦苦闘でした。 しかし、後半になると、人数も増えて運営が楽になり、またウインチを調子の良い 学習院ウインチに一本化し、加えて天候も安定したため効率はぐっと上がりました。 機体は、東大が21、24、学習院が13、Jrを出し、学習院Jrは東大生が 乗ってもかまわないという約束をしました。 発数、時間 JA2379 ASK21 66発 08+44時間 JA2486 ASW24 14発 2+29時間 (学習院) JA2324 ASK13 92発 09+26時間 JA2476 SZD51ー1 18発 04+12時間 夏合宿1の主なできごと 7月27日 陸送日。21はすでに妻沼へ陸送済みなので、帰りの陸送用の空トラックと、 ウインチと機材車、そしてW24を陸送。 午後から学習院と合同で機体を3機(東大21、学習院13、学習院Jr)組む。 この日、陸送を終えて宿舎の食堂で昼食をとっていた所、TVから流れてきた ショッキングなニュース!北大で事故!?二人死亡!? ASK13での事故らしい。これで北海道では13での死亡事故が2件連続 したことになる。合宿開始前から、いやなムードが流れてしまった。 この日の各校主将の合同ミーティングでも訓練部長の中村教官から安全に関しての 再確認を指示された。事故だけは起こさないでいこうと思う。 7月28日 合宿初日。東大は試験中であり、まだ試験がある者を東京に残して来ているので 合宿所には5人(!)のみ。寒い、、。また、東大21はこの日、耐空検査を 受けるので学習院13から上げ始める。21の耐空検査が終了した直後に東大ウインチ が大赤を出す。30分ほど待機するが直りそうもないので学習院ウインチにスイッチ! その前にも正味2時間の赤を出すなど、東大ウインチの調子はあまり良くない。 ともあれ、学習院ウインチとしてからは効率も上がり、18時20分まで訓練を 行なう。この日の総発数20発。 7月29日 この日はR/Wは第2。 午前中は学習院ウインチでバリバリ上げ、午前中だけで19発。 午後もこの調子でいこうと、昼休みをはさんで張り切ってR/Wに出る。 朝の内に、東大ウインチ、学習院ウインチ共にR/Wにセットして、 索点を行なっていたので、昼の時間に索点を行なう時間をけちって午後から 東大ウインチにスイッチ。しかしこれが大失敗。1発上げるたびに赤がでる。 しかも、赤修理をしている間に急速に天候悪化。雷雲が近付いて来る。 ウインチを変えて撤収フェリーをしようと学習院ウインチをセットするが、 東大ウインチの病気が移ったか、バッテリー上がりでエンジンかからず。 仕方なく、第1まで陸送を決行。Jr、21、13と陸送するが、21と13は 間に合わず、途中で雷雨の中へ。どうにもできずその場でターポリンをかけて待機。 雨が上がったあとで、陸送して撤収。何をやってもうまくいかない日であった。 午後からも、索点して学習院ウインチを使う、第2で撤収して雨をやり過ごす、 など、欲をださない判断が正解のようであった。反省。 明日からは東大ウインチは出さずに学習院ウインチに一本化することにする。 本日総発数21発也。 7月30日 この日のR/Wもまた第2。やはり昨日一晩機体監視を出してでも第2で撤収する べきだったか、、、などと、まだ昨日の疲れが振り切れないままR/Wへ。 が、しかし、昨日の雨の影響でR/Wは水びたし。第2は比較的ましだが、 第1の土手側では曳航不能。第1の川側では防衛大学がATをやっていて、ウインチ はない。普通、第1から第2への機体のフェリーは安価なウインチで無償で行なうの が慣例だが、この日は使えるウインチが無い。 仕方なく防衛大学にATでのフェリーを依頼する。 曳航料が気にかかるところだったが、後日、防衛大学から無料で良いと言ってきて くれた。本物の親方日の丸は太腹である。 さて、この日は典型的な夏の1日となり、学習院ウインチも調子良く穏やかな日で あった。しかしながら、1つだけ、ひやりとした事件が起こった。 東大、学習院はピストは東大、ウインチは学習院で訓練していたが、無用の混乱を 避けるため呼称は「東大ピスト」「東大ウインチ」で統一していた。 ぬかるんだR/Wのため少し遅れて訓練を開始した第1の法政はそれでもばりばり 上げて午前中に早くも索点を行なっていた。法政の無線で索点を行なっている事を 頭の片隅に入れながら本田がいつもどうりウインチに出発用意を出す。 「東京ウインチ、東京21準備良し」 東大ではなく東京と言っているのは防衛大学との混乱(東大、防大)を避けるため である。しかし、返答がない。少しして、 「法政ウインチ準備良し」 ???。聞き間違いか?いや、この声には聞き覚えがある。法政の4年生だ。 法政の無線にかぶったのだろうか。いや、法政は索点中のはずだ。おかしい。 強引だとは思いながらも、安全には変えられない。 「法政ウインチ、準備よしは東京ウインチです。法政は赤ですよ!」 と、他大のウインチに赤をだす。返答なしなのでもう一度赤を出すと、 「了解しています」 と、今度ははっきりと返答してきた。 結局、無線が混乱しただけで「危険」といえる状況にはならなかったが、 かなり紙一重だったと思う。なぜ、「東京」と「法政」を間違えたのか? 実はこの前にも同じ混同が何度か起きていた。しかし、それらはすべて 単にウインチを呼び出しただけであったため、ひやりとするようなことはなかった。 わざわざここに書くような事ではなかったかもしれないが、もし気づかずに「出発」 をかけていたら、索点中の法政の索が動いたかもしれない。今後、もしこういった状況 に至っても「多分大丈夫だろう」という甘い判断を、自分も他のマイクマンも、 絶対にしないようにあえて書かせてもらった。 考えにくい間違いではあるが、実際にこういった事があった以上、ほうって おくわけにも行かない。北大の件もあるので安全に行こうと思い、とりあえず ウインチの呼称を「学習院ウインチ」に変更した。 その後、同じ混乱は起こらず、また法政はこの日撤収となり、翌日からは「青山」 が入ってきたためこの件で頭を悩ます必要はなくなった。しかし、今後は注意が必要 であろう。 さて、この暑い中、ひんやりできる事件はここまで。この日にあった明るい 話題(?)を2つ。 1つ目。祝!!東大21(JA2379)ウインチ11、111発達成! だぁーーれも気がつかず、機体係の安藤(2)だけが密かにカウントダウンを行ない、 本日の30発目、記念すべき発数を向かえた。搭乗は細谷教官と矢野(4)。 もちろん、矢野(4)には訓練終了まで知らされることはなかった。 2つ目。同じく安藤(2)が指定養成の入所審査に合格。2年生のこの時期とは、 むちゃくちゃに早いペースのはずだが、ドイツで発数を伸ばした経歴を知る周囲の者は もはや誰も驚かない。少し気の毒な気もする。 最後までバッタ大会となったこの日は44発目をもって撤収となった。 余談。 この日21の11、111発目の搭乗となった矢野は、最後の整列の直前まで ウインチの撤収を行なっていたが、「入所審査に受かった安藤をム*ぞ!」 との耳打ちに、いそいそとウインチから廃油を用意して皆の元へやってきた。 当然ながら、その廃油は矢野自身に注がれたそうな。 7月31日 R/Wは第1、川側。昼近くまでバッタ大会が続く。 ところで、新勧ムードもひと息ついた6月に、続けて二人の新入部員がはいった。 その一人、早崎が本日初フライトとなった。感想は 「次はもっと心をおちつけてやります。」 頑張ってくれ。 また、学習院の一の瀬(3)が、この日21発目にセカンドソロにでた。 おめでとう! その後、小田原(4)が24で12:42に出撃し、そのまま滞空してしまう。 しかたなく索点の後、ピストと教官だけ残して全員宿舎へ引き上げ、昼休憩とする。 小田原は38分滞空するが、結局どこにも行けず、13:20に着陸。 注:夏の昼休みを宿舎で取るのは学連からの通達による。 休憩を終え、14:00位にR/Wに出てみると、少し雲行きが怪しい。 夕立ちが来るであろうことは予測できたがまだ大丈夫だろうと24をセットするが、 直後、無線機に雷のノイズが入りだしたのでキャンセル。そのままR/W上で全機 仮撤収とし、そのまま待機。しかし、雷雲は北の方をかすめただけのようで、 雷鳴は聞こえるが雨の降り出す様子は全くない。が、どんよりとした天気は 数時間続き、訓練再開のメドは立たない。仕方なくそのまま撤収とする。 本日は午前中のみ24発也。 余談。 あだ名を決めかねていた小倉(1)だが、この日学習院の部長先生から差入れの スイカが氷で冷やしてあるのに目をつけ、訓練中しきりに 「スイカ切りましょうよー、スイカ!」 と騒ぐ。 「すいか番長」の称号を授与。 8月1日 暑い1日であった。しかし、天候の急変もなく1日落ち着いた天気で効率はぐっと 上がった。 R/Wは第2。まずは機体を第1からフェリー。21の搭乗はこの日から参加の 長島(1)。普通、フェリーの機体は第2の空域に入ると第2のピストとラジオC`K を行なう。そのやり方が分からないと長島が言うと、機体の朝C`Kのために第1に 残っていた安藤(2)が「この通りに言えばいい」とやり方を紙に書いて渡した。 長島は素直にそれをコクピットに貼って、読み上げた。しかし安藤はちゃっかり いたずらをしていた。読み上げた無線は、 「東京ピスト、東京21、そちらの縄張りに侵入しました」 普通は、「そちらの空域に入りました」と言う。 ピストは変なこと言う奴だと思っただけでいつも通り返答するが、事情を知っている 第1に残った一同は大爆笑だったらしい。まったく、もう。 訓練は、暑い中ひたすらバッタが続くが、11:25にJrで出撃した杉峰(3) が武蔵大橋、給水塔をクリアし、12:39にゴール。降りて来るなり、 「条件いいぞ」というので、昼休みにしようとしていたピストでは単座パイロット のみ、R/Wに残すことにする。ウインチマン、マイクマンには残ってもらい その他は全員宿舎で休憩とし、単座パイロット4名(小田原(4)、本田(3)、 杉峰(3)、安藤(2))で、リトもやりながら単座を飛ばし続ける。 が、しかし、あがらない。小田原と本田が24であとの二人がJrを使うが、 杉峰以外の3人はバッタする。「おかしいな?」といいながら杉峰がJrで 13:27に上がると、大西、給水塔とクリアし、ダイレクトベースで帰ってくる。 腕の問題かぁー!?その後も休憩の間中単座を飛ばし続ける。結局上がりは杉峰 のみだったが、普段運営にやっきになっている上級生には楽しい時間であった。 また、もう一人の新入部員、山口がこの日初フライトを行なった。 こちらも頑張ってくれ。 午後からも着々と上げ、撤収間際に雷鳴が聞こえたものの、雨には降られず無事に 訓練終了。本日の総発数55発也。 余談。 昨日、セカンドソロに出た学習院の一の瀬の「儀式」が、雷鳴轟く中、本田の 「早く引き上げろ」の声も聞かず、学習院メンバーによって、激しく行なわれた。 危ないなぁ。 8月2日 合宿最終日。R/Wは第1土手側。 この日も朝からバッタ大会。発数だけが伸びて行き、昼頃にウインチ索がらみが 出たので、そのまま昼休みとする。 午後から、発数調整として、本田(3)と杉峰(3)の24とJrによる滞空合戦 などやったあと、合宿の撤収も見据えて、早めに撤収フェリー(北エンドから 南エンド)を開始する。この日まだ飛んでいない小田原(4)にJrのフェリーを 頼み、「20分位なら浮いてていいですよ」と伝えると、教官から 「20分で周回してこい」と声を掛けられる。 しかし、出発後、高度50で緩衝索切れ。そのままロングして撤収となる。 飛行時間一分。 その後、13、21をフェリーして大撤収。 総発数32発也。 付記 撤収作業もほぼ終り、最後にウインチを第2駐車場(第1の北エンド付近にある) へ入れるべく移動させていた所、駐車場の入口の角にあった「落し穴」に東大ウインチ を落してしまい、隣接していた畑に被害を出してしまいました。 この件に関しては主将の本田が妻沼所長の中村教官とともに8/3、8/4に かけて関係者に謝罪に回り、解決しました。御迷惑をおかけしました。 最後に ーー主将の個人的意見ーー 僕の知る限りでも始めての試みである合同合宿でした。関西では割と当たり前の ように行なっているようですが、各校の特色、主義主張の著しく異なる関東では 滅多に行なわれません。今回、試験的なものとして、比較的雰囲気の似ている 東大と学習院で実現させてみた訳ですが、それでも合同の難しさを痛感しました。 なにより、計画の段階で二転三転と非常にもめました。これに比べると、合宿中の トラブルはむしろ、これくらいで済んで良かったと思えるものでした。 細かく煮つめようとすればするほど主張が衝突し、調整に丸一カ月を費やしました。 これにより、夏合宿2では宇都宮大学との一部合同を考えていたのですが、 学習院との間でさえこうなのだから、学連外の宇都宮と短期間に話をまとめるのは 無理と判断し、残念ながらとりやめとしました。 このように、関東では合同という形はこの先でもほとんど実現することは ないでしょう。今回の件でも大きく問題になった責任の所在など壁となる問題は いくつもあります。 しかしながら、学連全体の人数が減少傾向にある昨今では、(東大の、約三人で 航空機一機自動車一台を維持しなければならない例は極端にしても)人数不足、 資金不足に苦しんでいる学校は少なくありません。 パラグライダーやハンググライダーなどの手軽な「空の散歩道具」が進出して きている現在、グライダーは多額の活動費と多大な労力、時間を必要とする「古風な」 スカイスポーツと認識されています。そこで学生の航空部が自校の伝統に固執し、 各校の壁をより高くする方向へ動き続ければ、ますますコストの増加、労力の増大を 招きグライダー離れを促進する結果となりかねません。 一部の学校でなされている、機体の共有化や今回のような合同合宿などで、コストや 労力を減少させる努力をしないと、グライダーそのものに魅力を感じてもらえなく なってしまうのではないでしょうか? 以上は、私が常々考えてきていることでありますが、そういった危惧への対策を 実現してみる良い機会と、この合宿にはかなり積極的に取り組みました。 結果は、互いに協力の姿勢を示しながらも細かい所で衝突を繰り返し、 現実の厳しさを思い知ることとなりました。合宿後に改めて振り返ると、 コストの低減という目的はほとんど達成できませんでした。これは、 複座練習機が13と21と、異なるものであったことが大きな原因でしょう。 一方、能力のある人材が増えたことにより、運営は、軌道に乗ったあとは、随分と 楽なものとなりました。合宿後半には発数も伸びたことを見ても、個人負担の軽減と それに伴う効率のUPという目的は、少なくとも後半に於いては、達成されたものと 思います。 あとは、この合宿参加者が「もう一度やりたい」と言えるようであれば まずは成功であったと言えるでしょう。 今後の予定 秋合宿 (10月上旬)氏家 秋期大会 (10/14ー10/19) 妻沼 *以降の予定は夏合宿2の報告書にてお知らせ致します。 今後とも御指導のほどよろしくお願い申し上げます。 東京大学運動会航空部主将 工学部機械科3年 本田 真一